山梨大学腎臓内科のホームページをご覧くださり有難うございます。
腎臓内科では、急性腎障害、慢性腎臓病、腎不全に加えて、腎臓病の原因となる高血圧、糖尿病、膠原病などに対する幅広い内科疾患の治療と研究に取り組んでいます。さらに、山梨大学医学部附属病院 血液浄化療法部を担当しており、患者さんに最適な血液浄化療法を安全に提供するとともに、教育研修期間として、専門的な知識と技術を兼ね備えた人材育成を行っています。
当教室は、昭和58年に女屋 敏正 初代教授が内科学講座第三教室を開講され、小林 哲郎 教授、腎臓病学をご専門とされる北村 健一郎 教授に引き継がれて発展してきました。この度、臓器別再編に伴い、私が令和5年4月1日付けで内科学講座腎臓内科学教室の教授に就任しました。腎臓内科の教室員は、地域の中核的医療および高度急性期医療を担う医師であると同時に、山梨県唯一の医育機関の教員であり、さらには優れた研究成果を世界に発信していく研究機関の研究者でもあります。これらを高いレベルで実践していくことができますよう教室を主導してまいります。
腎臓内科は、患者さん一人一人の治療に長期にわたって携わることが多く、患者さんとの信頼関係を築くことが大切です。尿異常から腎臓病の治療、さらには透析導入と導入後の管理といった腎臓病の初期から終末期まで当科で一貫して診療を行います。また、腎臓は臓器連関の要であり、腎機能が低下するにつれて多岐にわたる疾患を発症するケースも多く、総合内科的な診療も求められます。一方、術後や全身状態の悪化に伴って腎機能が低下した場合など、他科から相談を受けることが多い科でもあります。
日本の透析患者数は34万人を超え、年間1.5兆円を超える医療費を要しています。この予備群である慢性腎臓病患者数は国民の7人に1人といわれており、なかでも、蛋白尿の多い慢性腎臓病患者さんは、尿細管間質に遷延する炎症細胞浸潤が線維化を拡大させ、腎機能が失われていきます。私は、間葉系幹細胞を用いて慢性腎臓病の進行を抑制するための治療法の開発研究を行ってきました。間葉系幹細胞は、骨髄や脂肪に存在し、私たちの組織が障害を受けた際に動員されて、その組織を修復する機能を有しています。この細胞が本来持っている抗炎症作用をさらに増強させた間葉系幹細胞を投与することで、現在の治療法では腎不全に至る可能性の高い慢性腎臓病患者さんの腎機能の低下を緩やかにして、腎不全までの期間を延長させることを目的とした先制的再生医療の確立と普及を目指しています。これまで、産学連携や日本医療研究開発機構(AMED)再生医療等実用化研究事業からのご支援をいただいて、臨床試験を開始することができています。山梨大学腎臓内科の教室員とともに全力で取り組み、この治療法をできるだけ早く一般の慢性腎臓病患者さんへ届けられたらと願っています。
私たちは「あなたの未来に寄り添う」のキャッチフレーズのもと、お互いを尊重し、皆が助け合う精神をモットーにしています。さらに、学生、研修医、若手医師、指導医に至る一貫した屋根瓦方式の教育システムを確立しており、「良い土壌で新芽から花開くまで」シームレスな教育を心がけ、山梨県の未来を担う腎臓内科医の育成を行っています。近年、腎臓病学の研究は飛躍的な発展を遂げ、腎臓病患者さんの病態に適した治療法を選択する余地も拡大しています。今後、高い専門性を有する腎臓内科医のニーズは高まる一方です。ぜひ、当教室にお越しいただいて、腎臓内科の重要性と魅力を感じていただければと願っております。私たち山梨大学腎臓内科は、出身大学にかかわらず腎臓内科医を目指す医師を広く歓迎します。
1999年 山梨医科大学医学部医学科 卒業
1999年 広島大学医学部附属病院 研修医
2001年 一陽会原田病院/博愛病院 内科医員
2004年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 展開医科学専攻 博士課程
2008年 同上修了 博士(医学)
2009年 カロリンスカ研究所(スウェーデン) リサーチフェロー
2010年 広島大学大学院医歯薬学総合研究科疫学疾病制御学 助教
2011年 広島大学病院未来医療センター 特任助教
2015年 広島大学原爆放射線医科学研究所 特任助教
2017年 広島大学大学院医系科学研究科幹細胞応用医科学 共同研究講座教授
2023年 山梨大学大学院総合研究部医学域腎臓内科学 教授
英文原著論文180編(2024年3月)
ORCID:0000-0002-7838-1494