臨床研究

研究テーマ:慢性腎臓病患者における血中ケトン体濃度の臨床的意義に関する前向き観察研究

研究代表者:石井俊史

ケトン体は細胞の生存・維持に必要なATP産生の材料の一つです。近年、このケトン体が抗炎症作用や抗酸化作用など多彩な作用を有することが分かってきました。本邦では2020年夏より慢性腎臓病(CKD)患者の腎保護(N Engl J Med. 2020; 383: 1436-1446.)を目的にSGLT-2阻害薬という薬剤が使用されるようになりました。その腎保護のメカニズムの一つとしてケトン体が挙げられています。SGLT-2阻害薬を内服すると、血中ケトン体濃度が上昇することが報告されており(Diabetes 2016;65:1190–1195)、これが腎保護につながると考えられています。そこで、CKD患者において血中ケトン体濃度が腎予後との関連があるかどうかを調べるため、本研究を計画しました。山梨県における複数の医療機関にご協力いただき、通院中のCKD患者を対象として、試験登録時の血中ケトン体濃度を測定し、前向きに腎機能の推移を追跡することで、血中ケトン体が腎予後にどのように影響するかを解析します。また、ケトン体は腎臓に限らず、心筋、骨格筋などへの多面的な作用があると考えられることから、心不全による入院やサルコペニアの発症についても解析をします。これらの関連を明らかにすることで、血中ケトン体濃度の測定が慢性腎臓病患者の腎予後、心不全、サルコペニアの発症などを早期に予測する有用なツールとなるか検討を進めていきます。