
~ 和やかな雰囲気のなかで仕事に取り組み、一人ひとりが向上できる腎臓内科を目指して ~
近年の価値観の多様化、コロナ禍、働き方改革などを背景に、私たちの中に言葉で表せない閉塞感や不安が漂っていました。これまでの私たちは、共通の目的意識を持たず、協働意欲やコミュニケーションが不足していました。同じ部屋に集まりながら個々のプレーに徹する「ただの医師の集まり」になりかけてしまっていたのです。
「本当にこのままで良いのか?」いつしか私たちはそんな疑問を持つようになりました。あらためて私たち山梨大学腎臓内科の存在意義を考えると、真っ先に浮かぶのは「山梨県の腎臓病診療の中核を担う組織」でありたいということです。しかし、将来のことを考えたとき、このまま入局者が増えず、しっかりとした腎臓内科医が育たない状況が続けば、医療の質の低下は避けられず、山梨県の腎臓病診療の未来が危ぶまれます。
そこで私たちは、診療・教育・研究に並ぶ第4の柱として「戦略的組織づくり」を掲げ、山梨の腎臓病診療を支える持続可能な組織の構築を目指して、「山梨大学腎臓内科未来創生プロジェクト」と名付けた組織改革に着手しました。
こうした状況を打破するため、まず取り組んだのは、私たちの存在意義や存在価値について考えることでした。Appleをはじめ世界で躍進する革新的な企業が人や社会を動かす秘訣としてSimon Sinek氏が提唱したゴールデンサークル理論を参考に、まずは私たち山梨大学腎臓内科の「Why」に立ち返ることを試み、以下のVision、Mission、Value(VMV)とタグラインを策定しました。
(図:山梨大学腎臓内科のVMVとタグライン)
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生活習慣病領域をはじめ様々な領域で追及されはじめた「ウェルビーイング」。真の意味で患者のウェルビーイングを目指すには、そこに向き合う私たち自身もウェルビーイングを実現することが必要不可欠です。私たちは腎臓内科学を通じて、腎臓病の発症・進展を抑制することはもちろん、私たちを含むあらゆる人のウェルビーイングを想い、未来に寄り添う、そんな存在でありたいと考えました。
では、具体的に何をすればいいのか?文献を検索しても私たちの組織に適用される確立された正解はありません。仮にあったとしても、そこに私たちの「想い」や「感情」がなければ、十分にワークすることはないはずです。そこで、私たちのHow、Whatを見つけるべく考案したのが、月に1回開催する「未来づくりミーティング」です。ここでは、組織内に漂う閉塞感や不安を言語化し、日々の課題を俯瞰的視点でとらえ、本質的な組織の課題として再定義し、私たち自ら解決策を考え、実行に移す取り組みを行っています。開始から3か月時点で、早速成果が現れ始めました。
(図:未来創生プロジェクト開始から3か月間での変化)

私たちの代名詞ともいえるこうした取り組みを通じて、組織内には新しい風土・文化が芽生え始めました。受け身で業務をこなす医師の集団から、主体的に業務効率化を提案し、新しい研究や活動を生み出す能動的な“チーム”へと生まれ変わりつつあります。個々の能動性の高まりとともに、組織としての持続可能性が向上する兆しが見られ始めたのです。

●未来づくりミーティング
未来創生プロジェクトの中核となる活動。各タスクリーダーが進捗報告や計画提案を行い、新たな課題・タスクを話し合う、月1回の定例会議。
●1 on 1 未来づくりミーティング
医局員個人の成長やキャリア形成のための支援。中々落ち着いて考えられない自身の未来を考え、言葉にする機会を設ける取り組み。
●自己紹介プレゼン
隣で働いている同僚のこと、本当に知っていますか?同僚の人柄や価値観を共有し、コミュニケーションを活性化する取り組み。
●腎臓内科の壁リノベーション
学会や講演情報だけでなく、腎臓内科の魅力を伝える新しい空間をつくる取り組み。
●腎臓内科アワード
あたりまえのように思いがちな医局員の日々の頑張りを言葉や形にして称える取り組み。
「診療・教育・研究」という存在意義のもと、持続可能な組織であり続けることは容易ではありません。これから先、真に求められるのは、この存在意義を支え、持続可能な組織とする土台部分(組織の在り方)ではないかと考えます。私たちの組織づくりに明確な正解(エビデンス)が存在するわけではありません。しかし、独自のプロセスで戦略・戦術を練り、試行錯誤を重ねることが、やがて私たち山梨大学腎臓内科の“価値”になるのだと信じています。自分たちの手で未来を創る私たちの挑戦、あなたも”ワクワク”しませんか?