今あなたに伝えたい、新たな国民病「CKD」とは?


国民の7人に1人といわれている「慢性腎臓病(CKD)」

CKDとは“慢性腎臓病”のことで、腎臓の働きが健康な人の60%未満に低下するか、あるいはたんぱく尿などの腎臓の異常が続く状態を指します。成人の7人に1人がCKDを患う(山梨県内では9万人程度)と推測されており、「新たな国民病」とも言われています。

CKDは、初期には自覚症状はないため、なかなか気づきにくい病気です。症状が現れた場合には、すでに進行していることが多く、腎機能の低下に気づいたときには腎臓の替わりをする治療(人工透析や腎移植)を始めなければならない人もいます。早期発見・早期治療によって進行を食い止められる可能性があるため、定期的な受診・検診を受けることをおすすめします。 また、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満がある場合や、家族に腎臓病の人がいる場合などは、CKDのリスクとなるため注意が必要です。これらの問題を抱えている、あるいは腎機能の異常が見つかった場合には、必ず医療機関を受診してください。

こんな生活に気をつけよう

CKDは生活習慣病の1つとも言われます。発症・進行を抑えるには、日々の生活習慣が重要です。CKDは放置すると、透析だけでなく、心筋梗塞や脳卒中といった重大な病気にもつながります。このようなリスクを減らすために、もう一度あなたの日々の生活を見直して、いまからできることをはじめてみませんか?

●塩分摂取過多

塩分の摂りすぎは、高血圧を起こしたり、腎臓など臓器に直接ダメージを与えたり、血圧の薬の効き目を弱めたりします。使用する調味料、加工食品・インスタント食品には注意し、味付けや調理方法を工夫して、減塩を心がけましょう。

●運動不足

運動は、“魔法の薬”とも呼ばれ、CKDの進行を抑える可能性が報告されています。CKDの原因となる糖尿病や高血圧症の発症を抑えたり、適正な体重を維持したりするためにも、運動をすることは重要です。かかりつけ医と相談しながら、自分の体力や体調に合わせて、適切な運動を定期的に行うように心がけましょう。

●喫煙

たばこには約200種類の有害物質が含まれており、そのうち約60種類にの物質には発がん性の作用があるとされています。たばこはCKDだけではなく、肺がん、心筋梗塞、脳卒中などの様々な病気の危険因子です。最近身近になった電子たばこや加熱式たばこにも有害物質は含まれており、健康リスクが低いという根拠はありません。今からでも遅くありません、自分や家族の健康を守るために禁煙をしましょう。

山梨県では糖尿病性腎症による新規透析患者数が【全国ワースト1位】に


2010年度の調査において、山梨県では人口10万人あたりの糖尿病性腎症による透析患者数が全国第1位という結果でした。
この状況を生んだ背景の一部には、「(患者)透析が必要と思っていなかった」「(非専門かかりつけ医)透析導入間近になって専門機関に紹介した」など、患者さん自身の“関心の低さ”や、かかりつけ医・専門機関の“連携体制が不十分”であったという問題がありました。

私たちが行う山梨県のCKD対策

もっと関心を持っていただけるように

私たちはこれまで、CKDに関わる啓発活動や病診連携システム構築などに力を入れ、透析導入数の抑制を大きな目標として取り組んできました。ところが、なかなか透析導入数の減少に転じないばかりか、令和4年度の山梨県が行ったアンケート調査によると、8割を超える方がCKDのことをよく知らないという状況でした(図表)。誰もの健康に関わる大切な知識であるはずなのですが、非常に低い認知度であったのです。私たちはもっと関心を持ってもらうために、やまなし減塩プロジェクトをベースとしたCKD啓発活動、山梨県内の腎臓内科専門医紹介基準・かかりつけ医によるCKD診療の基本方針に関する見直し、PROJECT ZEROなど、様々な方向からのアプローチを展開し、さらに力を入れた取り組みを行っています。

腎臓内科専門医紹介基準やかかりつけ医によるCKD診療の基本方針に関する見直し

山梨県慢性腎臓病対策部会において新しい腎臓内科専門医紹介基準を策定しました(図表)。従来に比べより専門医に紹介しやすい基準としたことで、腎臓病患者をより早期に発見し、進展を抑制する狙いがあります。また、かかりつけ医のCKD診療の基本方針として、GFRと尿所見について腎臓内科医と情報を共有することや、減塩と適切な水分摂取について確認と指導をすることを新たに定めました。

全国トップレベルの塩分摂取過多という山梨県の社会課題に挑む「やまなし減塩プロジェクト」

世界の健康寿命に最も影響を与える要因の一つが、“塩分の摂りすぎ”と言われています。2010年の調査で塩分摂取量が男女とも全国第一位となったのが山梨県です。山梨県は健康寿命の高い県ですが、減塩を広めることで、さらに全国トップの健康寿命を目指すことができると、私たちは考えています。 そこで、山梨県で活躍する医師や山梨県健康増進課などと連携し、やまなし減塩プロジェクトを発足しました。山梨県全体に減塩を広める活動を通じて、CKDを予防し、さらには健康寿命の延伸を目指していきます。

現役医師が地域と連携してヘルスリテラシーの醸成を目指すプロジェクトが発足
ゼロから始める山梨の健康づくり 〜PROJECT ZERO〜

人生100年時代と言われる今、医学発展の恩恵を受け、生活習慣病による合併症は予防でき、寿命を延伸することが可能となりつつあります。その一方で、例えば私たちが関わる糖尿病患者の生涯を俯瞰的にみてみると、私たちが介入する以前に、実はまだ大きな“余地”があることに気づきます。この余地において重要な鍵を握るのが、健康に関わる「学び」であると考えています。この学びに焦点を当て、世代を超えた山梨の健康づくりに取り組むのがPROJECT ZEROです。個人の努力に先立ち、社会的要因にアプローチする“0次予防”という考え方に由来する「ZERO」には、様々な思いが込められています。境界をゼロに分野を超えた様々な領域の人々が集結し、いま新たに走り始めました。